大気が刃物のように感じる
凍てつく夜

〇ーソンに潜伏させている、諜報部員から
通信を知らせる、LINEのチャイムが鳴った




「だんな、例のブツが入ってますぜ!」
了解のスタンプを、間髪入れず
送り返し、ダウンジャケットを羽織り
夜の街に車を走らせる

深夜のコンビニに、車を停めると
周囲に目配せをしながら、店内へ侵入する

そのブツは、冷凍庫の中
人知れず、積み込まれていた






冬のアイスという地位を、確立した名品
「雪見だいふく」の限定バージョン

その名も、「雪見だいふく 黄金のみたらし」!!
こっそりレジにブツを置くと、高らかに金額を
告げる店員

(隠密行動なのに、やっやめてくれ!)
足早に店を後にし、本部に戻ると
さっそくブツを確認する




見た感じは、雪見だいふくと
なんら変わらないようだが・・・

パッカ~~ンっと、割ってみた
雪見だいふくより、外側のモチが
確かに厚めだ

中のみたらしの餡も、甘すぎず
程よい塩気もあり、まさに冷製の
みたらし団子と言える

そして何より、あっという間に
食べきってしまう、はかなさも

本家の「雪見だいふく」さながらの
食後のさみしさを誘うのだ

(大人になったら、絶対2パック
食べてやる・・・・・・・・!)





郷里の新潟では、みたらし団子ではなく
しょうゆ団子と言っていた

あんも、醤油の味が強く
そんなに甘くなかった

でも、「みたらし」というと
「女たらし」みたいで、へんにウキウキ

女たらしと言えば、英語でプレイボーイ
中学の頃、もてるプレイボーイがいて

そいつは、彼女の大事なところも
みたらしい・・・と噂が立ち

年の離れた兄を持つ、ませた友達の家に
遊びに行ったとき、俺たちも大事なところを
見たい!プレイボーイにはプレイボーイだ!

わけのわからない理屈で、友達が取り出したのは
兄の宝物の雑誌、本場アメリカ版プレイボーイ

「俺たちも、大人の階段を登るんだ!」
高らかに宣誓し、ページをめくる友人

高鳴る胸の鼓動、未知との遭遇!
グラビアの、一点に
全神経を集中させる、若者二人

ところが、とんでもない現実が
大人への高い障壁となって、二人の前に
立ちふさがっていたのだ

大事な部分が、黒いマジックで
塗ってあるではないか!

俺たちは、教科書やノートの大事な部分は
蛍光色のアンダーラインを引くのに

米国人は、大事な部分に
墨を塗るのか~~~!!

ホワィ アメリカン ピーポー‼

いや、それはアメリカ人でなく
到着した空港の、税関の職員
日本人の仕業だったのだ…

しかし、若者の飽くなき探求心は
折れなかった

マジックなら、シンナーで落とせるはず!
そう叫んだ友人は、プラモデルの
塗料用のシンナーを、布に染み込ませ

女体のデリケートゾーンを、ゴシゴシと
こする

するとどうだ、期待を裏切ることなく
悪の象徴である、黒のマジックは
みるみる消えていく

大人への扉が開いた!
栄光の瞬間を、確信したその時

二人の眼に、映ったものは
印刷もとれ、白い紙に戻ったグラビア

大事なところを、神々しいまでに
白く輝かせ、にっこり微笑む
金髪美女


お宝を目前にしながら、目の前の海に
沈めてしまった、海賊のように
無言で立ち尽くす、若人二人

みたらし団子のように
甘酸っぱい想い出が、味覚と共に
口の中に溶けてい…

プレイボーイなあいつは、見たらしい…
  


Posted by 原田鈑金塗装  at 09:46Comments(6)グルメ天草以前のお話